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営業時間に関する重要なお知らせ

発達相談室つばさでは、2021年4月より、営業時間を大幅に変更いたします。


平日は17:00~(来所に限ります、平日の訪問は受け付けておりません)

土日は応相談です。


また、これまでの訪問カウンセリング主体のカウンセリングから

店舗にお越しいただくスタイルに変更いたします

573-0001 枚方市田口山2丁目31番1号2階 です

「キナリイロ」という児童発達支援・放課後等デイサービスの事業所と共有のスペースを使います。

家庭訪問をご希望される方は、個別にご相談下さい。


料金に関する重要なお知らせ

旧)50分 6,000円  から

新)50分 5,000円  に変更いたします。

(ただし、家庭訪問の場合はこれまで通り、50分6,000円です)


一部のご利用者様にはご不便をおかけいたしますが、

より一層のサービス向上に努めてまいりますので、今後とも発達相談室つばさをよろしくお願い致します。

忙しさにかまけ、すっかり更新が滞っておりました。


突然ですが、2021年4月より

児童発達支援・放課後等デイサービスの事業所「キナリイロ」を立ち上げます!

場所は枚方市、田口山を検討しています

(山田池公園の北側です)


現在のつばさでのサービスも継続いたしますが、

児童福祉法にのっとった新規事業所をご利用いただくと利用者負担額も1割となり、安心して療育のサービスを受けて頂けます。


障害児通所支援事業の受給者証をお持ちの方も、まだお持ちでない方も、

是非ご利用を検討ください。


まだまだ作成途中ではございますが、新しい事業所のHPです。

お問い合わせは上記サイトからお願いします。

準備状況は随時「キナリイロ」のブログなどでご確認ください。

お問い合わせ・ご利用申し込み、お待ちしております!!!

先日の記事でお知らせした

Vineland-Ⅱ、MSPAのテストモニターの募集ですが、

沢山の方からご質問やご希望を頂いております。ありがとうございます。


テスターの数もある程度集まり、スケジュールも埋まってきたため、募集は両検査ともあと若干名で締め切らせて頂こうと思います。

お問い合わせいただいても、必ずご希望に添えない場合もあるかもしれませんが、なにとぞご了承ください。



お子さんの発音が上手くいかず、悩まれている方も多いと思います。

サ行やタ行が言えず、「あの”たー”」となったり、「”しぇんしぇい”」となったりします。

発音そのものが不明瞭なこともあります。


こういった発音を修正し、正しい音が出せるように練習することを構音訓練と言います。


発音自体は喋り始めてから5年で完成すると言われています。

つまり、1歳くらいで話し始めたとして、6歳ごろ、就学を前にすべての音が上手に出せるようになる、それが一般的な発達の目安となります。


この時期を過ぎて、上記のような発音の誤りや、不明瞭さがある場合、構音訓練の対象となります。


ただし、構音に関係する何らかの身体障害がある場合は、発音の問題は身体機能と直結しているため、訓練の対象とはなりません。

あるいは知的な発達に遅れがみられる場合、訓練が上手く行われない可能性があります。

構音訓練に必要な複雑な指示の理解や遂行、家庭での練習に上手く対応できないためです。


まとめると、構音訓練の対象となるお子さんは

1.なんらかの構音に関係する身体障害がないこと。
2.知的に遅れのない小学校1年生以上の子ども(あるいは、知的水準が小学生1年生以上の子ども)

の両方を満たすお子さんです。


発音に関するお悩みや、構音訓練を希望される場合、下記のフォームからご連絡ください。

※構音訓練に関しては、当室の通常の営業時間とは異なり、日曜日の9時~17時までの間に限定させて頂きます。



Vineland-Ⅱ、MSPA

両検査のテストモニターを募集します。


お申し込みはこちらの問い合わせフォームから、希望する検査名を明記してお知らせください。追って返信いたします。

※テストモニターのため、無料となりますが、検査結果を個人が特定されない形で公表させて頂き、検査への感想やコメントをお願いさせて頂きます。その点ご了承ください。




Vineland-Ⅱとは、個人が社会生活においてどの程度の適応的な行動をとれているか、を測定し、その人の強みや支援の方向性を探ります。

WISCなどの知能検査やK式のような発達検査と違う所は、

”その人の潜在能力”ではなく、”その人が今現在発揮できている能力”を調べるところです。

知能検査や発達検査の結果と合わせてみると、とても興味深い結果が出ます。

詳しくは下記の記事をご覧ください。



MSPAとは、個人の発達の特徴を14個のカテゴリーに分け、それぞれにどの程度の特性があるかを調べます。

特性は1~5段階で表され、3以上が要支援とされています。

支援の必要な特性が一目でわかり、かつ支援の必要性の程度が数値化されるので、直感的にも客観的にもその個人の発達特性が共有しやすいのが特徴です。

詳しくは下記の記事をご覧ください。




Vineland-Ⅱが”その人が現在発揮できている能力”を表しているのに対して、MSPAは”その人のもともと生まれ持った特性”を表しています。

どちらの検査も強みや弱み、支援の方向性を探るのにとても有効で役に立つ検査ですが、検査で調べる内容や結果の出方に差があるので、以下にまとめてみました。





お申し込みはこちらの問い合わせフォームから、希望する検査名を明記してお知らせください。追って返信いたします。

※テストモニターのため、無料となりますが、検査結果を個人が特定されない形で公表させて頂き、検査への感想やコメントをお願いさせて頂きます。その点ご了承ください。

「発達障害の診断は受けたけれど、自分の子どもがどういった特徴があって、どういう支援をしたらいいのか分からない」

「診断は受けていないけれど、育てにくさはあるし、支援は必要そうに思うけれど、自分の子どもが他の子と比べてどういう特徴がどの程度あるのか分からない」

「困っているけれど、何から手を付けていいか分からない」


こういった悩みを持つ方は大勢いらっしゃいます。

子どもの発達は個人差があり、それが平均から離れていると言っても、即支援や工夫が必要かと言うと、そうでもありません。

第一、何をもって個人差なのか、どの程度”平均”から離れているのかはかなり文化的な価値観や主観によります。

しかし、親が知りたいのは

「自分の子がどういう特徴があって、何に困っていて、あるいは何に優れていて、どうしたら毎日を元気で楽しく過ごせるか。親として何をしてあげればいいか」

ではないでしょうか。


そんな方のために、今日は「MSPA」という発達検査をご紹介します。



MSPAとは簡単に言うと

「14個の発達の特徴の内、どの項目の特徴が強いか(弱いか)、支援を必要としているのかを、視覚的に分かりやすくとらえられる」ものだと言えます。

ことばで言っても分かりづらいので、下のチャートをご覧ください。


レーダーチャートを見て頂くと、一番上に「コミュニケーション」時計回りに「集団適応力」から始まる14個の発達の特性が並んでいます。

それぞれが、どの程度強いかが1~5段階で評価され、グラフになります。

2.5以下は、特性が少しあるけれど問題なし、あるいは特性なし、という意味で、

3以上が特性があり、支援が必要と判断される水準です。

レーダーチャートの線が小さくなればなるほど困り感の少ない可能性が高く、

大きくなればなるほど困り感も大きいと予想されます。

もちろん、上のチャートのように、一部が外側に飛び出て(困り感が高い)、一部は中央に寄っている(困り感が少ない)、という形にもなりえます。


上のチャートのお子さんの場合、

「コミュニケーション」「集団適応力」「共感性」「こだわり」「感覚」の特性が強いために集団の中で他者と関わり、生活していくことに大きな困り感が出そうです。

また、「衝動性」「多動性」「不注意」も高いことから、分かっていてもついやってしまう、何度も同じミスをしてしまうということも考えられます。

しかし、運動が得意で手先の器用さもあり、生活リズムがしっかり整っていて、学習上の問題はないお子さんだと言えます。


このように、お子さんの困り感や得意な領域、どこにどう支援を向ければいいのかが誰の目にもわかりやすく示されるのが、MSPAです。



さらにもう少し言うと、レーダーチャートの右上の部分は主に「ASD(自閉スペクトラム症)」の特徴を、右下部分は「過敏性」や「不器用さ」を、左下は「AD/HD」の要素を、左上は「生活上の問題」や「学習障害」の要素を表しています。


発達特性(個々人の発達上の特徴)は、全て「スペクトラム」です。

どの程度「こだわり」が強いのか、「多動性」があるのか、は”程度の問題”であり、だれしも少しは持っていて、中には色濃く持っている人もいる、それらは明確な基準や境界はなく、なだらかな坂のようなもので、区別・分類するよりも同じ線上にあると考えられる。

これが「スペクトラム」という意味です。


つまり、誰でもある程度はASDであり、AD/HDなのです。

あなたは風呂に入る時、どこから洗うのか手順が決まっていませんか?

それは「こだわり」だと言えるのではないでしょうか

あなたは旅行するときついつい予定を詰め込みすぎませんか?あるいは自由気ままに無計画ではありませんか?

それは「多動・衝動性」ではないでしょうか。


こういったことがその人にどの程度元元生まれ持った特性として備わっていて、どの程度の支援を必要としているのか、それがMSPAでわかります。


特性が色濃く(3~5)の範囲であっても、周囲がきめ細やかに対応し、困り感はない場合もあります。

逆に特性が少なくても(2.5以下)、周囲の理解のなさで本人がとても困っていて不適応に陥る場合もあります。


まずは自分のお子さんがどういう発達特性を持っているのかを客観的に知ることが大事です。

「うちの子は落ち着きがないからAD/HDだと思う」と相談に来られた方が、よくよくお話をお伺いすると、こだわりや過敏性などのASD特性を併せ持っていた、というのはよくある話しです。

診断を受けていない、あるいは受診をしても診断はつきづらいだろう、と思われるお子さんでも、13の特性の内いくつかを持っていることも、全く珍しくありません。


「受診をして診断も受けたけれど、自分の子どもの障害について詳しい説明を受けていない。子どもがどういった特徴とどういった支援を必要としているのか知りたい」という方も、

「受診などはしていないが、自分の子どもの事をもっと知って、親としてどう接すればいいのか知りたい」という方も、

「子どもの特徴を学校やデイサービスなど、子どもと関わる支援者に伝えて、よりよい環境を作りたい」という方も、

是非一度MSPAを使ってお子さんの特性を見てみませんか?


検査自体は簡単なアンケートに答えて頂き、

1時間~1時間半程度の保護者様との面談にて行えます。

お子さんの同席は必要ありませんが、どんなお子さんなのか少し見せて頂けると雰囲気が分かって、お話がしやすくなります。


ご興味の有る方は一度問い合わせフォームからご質問ください。




日々発達相談をしていると、こういうケースによく出会います。

「1歳半健診で言葉の遅れを相談したけれど、『3歳まで様子を見て』、と言われた」

「すぐに療育や専門機関を紹介してほしかったけど、『3歳になってから』と言われて、不安な日々を過ごした」


発達相談室つばさでは、

「様子を見る」のではなく、今必要な支援や関わり方を考え、具体的なプランを提供していける存在でありたい、そう考え、日々の相談に乗っています。


以下、事例をお読みください。


初めての子育て、身近に小さい子もおらず、子どもと関わった経験もあまりない
Aさんはお子さんの子育てに漠然とした悩みを抱えていました。

それは、言葉がなかなか出てこず、要求を伝えてくることもあまりなく、いい意味でも悪い意味でも”手がかからない”我が子についてです。

周囲からは「男の子はそんなもの」「そのうち言葉も出て来る」「母親の愛情が大事」などと言われますが、Aさんの漠然とした不安は消えず、余計に周囲に相談できなくなっていくのでした。


Aさんは1歳半健診の時に、思い切って保健師さんに相談をしました。

健診では積木は3個積んだものの、絵カードによる指差しは出来ず、母親の後ろにじっと隠れていました。

保健師さんに言葉がなかなか出てこないことを話し、後日個別に相談をすることになりました。

そこでは、少し言葉の遅れがあるものの、まだ小さいし、しばらく様子を見てみましょう、ということでした。

Aさんは”そんなものなのかな…”と、まだ不安を抱えたままでしたが、保健師さんがそういうなら…と待つことにしました。


しかし、2歳になっても意味のある言葉は出てこず、それまではあまりなかったかんしゃくが激しくなり、子育てにも疲労の色が濃くなってきました。

子どもがかんしゃくを起こすので周囲の目を気にして外出をするのも苦痛になり、周囲にも相談できず、ひきこもり、子どもにあたることも増えてきました。


たまらず2歳半健診で再び保健師さんに相談し、「3歳になったら医療機関を受診してください」と言われ、3歳の誕生日後すぐに受診が出来るように予約を取りました。

しかし、それもまだ半年後の事(大きな医療機関では初診まで何か月も待つことがざらです)。


我が子にどう対応していいのかわからず、このままでは幼稚園に就園できるのか、もしかして母子このままずっと家にいる日々が続くのかと、精神的にも不調をきたすようになりました。


このように、子どもの発達について漠然と、しかし確実にひっかかるところがありつつも、早期に適切な専門機関に繋がる事の出来ないケースは多々あります。

発達に明確な遅れがない場合に特に多く、”一般的な発達”を知らない第一子を育てるお母さん達は、不安を抱えながらも”こんなものかな…”と時を過ごし、周囲からの安易な「大丈夫」や「愛情が大切」という言葉に傷つくことも多いのです。



発達の遅れが顕著であっても、こういうケースもあります。


Bさんは1歳過ぎから子どもの言葉の発達が遅いこと、夜中の睡眠が安定せず、かんしゃくが多いこと、こだわりや過敏(少し手や口が汚れただけで嫌がる。日常生活の音に敏感に反応して泣く、など)が強く、育てづらさを感じていました。
保健師さんに相談し、市の療育に通い始めましたが、子どもの様子は一向に変わりません。
自分で医療機関を探し、2歳を過ぎる頃に初めて受診しました。


簡単な問診の後、発達検査を取り、1年の遅れがあると言われました。

ショックではなく、むしろ「やっぱり」と思ったそうです。

しかし、医師からは「半年後にまた来てください」と言われただけで、特にどうすればいいのかという説明はありませんでした。

「何か出来ることはありませんか?」と聞くと

「母親との愛着が育っているから大丈夫。子どもの気持ちを代弁してあげて」と言われました。

それはその通りかもしれないけれど、日々の子育ての苦労は一向に減りませんでした。


Bさんは自分の子どもが自閉症ではないかと思っていましたが、医師からは明確な診断はなく、「3歳になってから」と言われました。

自分で民間の療育機関を探し、通いだしましたが、子どもと楽しく遊んでくれるのはいいものの、Bさんの疑問や質問には明確な答えは返ってこず、”このままでいいのかな…”と不安が募っていきました。


3歳になり、自閉症の診断がおり、病院の言語訓練や作業療法に通いだせるようになりました。

Bさんは「もっと早く診断がおりていれば、早くから子どもに適切な療育や対応が出来たのに…」と悔しい思いをされたそうです。



悲しいことに、現在の日本の小児保健医療はより早期の段階で子どもの発達を見極め、適切な関わり方、支援方法、支援(医療・療育)機関を紹介することが十分に出来ていません。


「様子を見ましょう」というのは今特に出来ることや助言できることがない時に、とりあえず保険のように言う言葉です。

仮に様子を見ることにしても、何をいつまで観察し、どういう結果だったら次にどういう手を打つのか、ということまでを提言するのが専門家の務めです。

そうでなければ親御さんをただ不安にするばかりです。


医療機関であっても、乳幼児期に適切なアセスメントをし、子どもとそのご家族に何が必要か判断できるところはごく少数なのが現状です。

診断と投薬は医師の仕事ですが、子育てに関する具体的な関わり方や子どもの導き方については基本的に医師は専門外です(もちろん、ごく一部にそういう丁寧な診察をされている医師もいらっしゃいます)。

それが可能なのは心理士、言語聴覚士、作業療法士などの専門職です。

しかし、そういった専門職が常駐し、親御さんからの継続的な相談に乗れる体制が整っている病院は限られるのです。


診断が必ずしも必要なのではありません。

診断がおりていようがいまいが、障害があろうがなかろうが、

大切なのは、今、どのような関わり方が子どもにとって必要なのか、です。


各家庭に応じた、子どもの発達を促すための手立て、

問題行動を解決するための手立ては、より早期に、より早い段階で手を打てば、効果も上がりやすく、解決が簡単になります。


「様子を見る」のではなく、今必要な支援や関わり方を考え、具体的なプランを提供していける存在でありたい。

発達相談室つばさはそういう療育機関、相談機関でありたいと思っています。

今回お話しするのは、「不登校と考え方のくせ」

「考え方のくせ」と言うのは「認知のゆがみ」とも言われ、意味としては「極端な考え方、正しいけれど、役に立たない考え方」の事を言います。

これは子どもだけに見られることではなく、大人も一緒です。


例えばこんな例があります。

A君は不登校で、いじめられたわけでもなく、学習についていけないわけでもなく、理由を聞いても明確な答えが返ってきません。ただ「B君と喧嘩してるから…」とだけいいます。しかし、B君にいくら確認してみても、喧嘩した事実はないと言います。どういうことなのでしょうか…?

A君にじっくりとお話を聞いていくと、こう考えていることが分かりました。

「B君が挨拶してくれなかった。B君は僕の事が嫌いなんだ。B君に嫌われるくらいならもう学校にいかない」


A君にはもともと友達は少なく、ただB君とは仲良しでよく一緒に遊んでいました。どうもそんなB君から挨拶がなかったことが数回あり、その他の些細なことも重なって、学校に行き渋るようになり、そのまま不登校となったようです。

今この記事を読んでくださっている方は、「考えすぎ。極端すぎる」とそう思う事でしょう。

でも例えばこんなことを感じたことはありませんか?こう振舞ったことはありませんか?


出かけ先で知り合い2人を見つけたけれど、知り合いは2人で喋っていて、”チラッとこちらを見た”けれど、すぐに目を逸らしてお話を続けていた。「あれ?」と思って声を掛けたけれど、”無視をされ”たので、「自分の悪口を言っている」のだと思い、嫌な気持ちになってその場を離れた。その後もなんとなく話しかけづらくなって、少し距離を置くようになった。


こういう経験は、多かれ少なかれ誰でも経験があるものではないでしょうか?


お気づきのように、これはA君のとった思考や行動とほぼ同じパターンです。

”挨拶がなかった”ことは(たぶん)事実ですが

「B君は僕の事が嫌い」、や、「無視をされた」、「自分の悪口を言っている」はあくまであなたの「考え」であって、事実ではありません。

しかし、そう考えることによって、「B君に嫌われるなら学校に行かない」というネガティブな気持ちや行動になったり、「自分の悪口を言っている(=自分の事が嫌いなんだ)」という沈んだ気持ちや、”距離を置く”という行動に至ります。


子どもでも大人でも、自分が弱っていたり、難しい環境にいるとこういう考え方になりやすいものです。

こういった極端な考え方や、正しいけれど、役に立たない思考のことを、「考え方のくせ」と言います。

「C君にいじめられた。僕はこれからもずっといじめられるだろう」(極端な思考)
「C君にいじめられた。問題は解決したけれど、また誰かにいじめられたらと思うと怖くて学校にいけない」(正しいが、そう考え続けると恐怖や不安が増し、結果学校に行けなくなる、という点で、役に立たない思考)


子どもは多角的に物事をとらえることが難しく、なかなかそれをうまく言葉で表現できないことが多いものです。こういった考えをはっきりと自覚できているかどうかも、子ども次第です。思春期になると親に自分の考えを話すことに抵抗もあるので、より何を考えているのか分かりづらくもなります。

他にも、認知のゆがみにはこういったものがあります。

心の健康副読本編集委員会、「悩みは、我慢するしかないのかな?」より抜粋


「うちの子もこういう所ある~!」と思われた方も多いのではないでしょうか。


こういった「考え方のくせ」は修正することが可能です。


修正と言っても、信頼できるカウンセラーとの間でじっくりと自分の考えや気持ちを認識し、間違っている点は指摘し、より柔軟に別の考え方をした方が良い点は、一緒にどう考えればよりハッピーで前向きな気持ちになれるのか、相談していきます。


”B君が挨拶してくれなかった”のは、

”聞こえなかった”からかもしれないし、”B君自身になにか問題があった(その時A君の事とは無関係に頭を悩ませている時期だった”かもしれません。

「B君に嫌われた」と考えていましたが、学校の先生や友達から情報を聞くと、A君が学校に行き渋りだした時期にB君からA君に心配の声を掛けてきたこともあったそうです。

しかし、「B君に嫌われた」と思っていたA君は、疑心暗鬼になってそのB君の声を”心配”、”思いやり”とは取れなかったようでした。

落ち着いて、「自分が逆の立場だったら」などと考えると、意識の片隅に追いやられていたそういったB君の行動の意味も理解できるようになります。

「B君が挨拶をしてくれなかったのはたまたまだし、自分が悪いわけではない」、「学校を休んでいる間、D君がプリントを届けてくれていて、いつも「待ってるで」と温かい声を掛けていってくれる。困ったらD君にも助けてもらえるかもしれない」

こんな風に考えると、気持ちが楽になる事でしょう。


こういった”考え”と”気持ち”、”行動”の関係を「認知の三角形」といいます。


この3つは相互に影響しあっています。

「考え」を変えることで気持ちが変わり、行動が変わることもありますし、

行動を先に帰る事で気持ちに変化が起こり、「考え」が変わることもあります。

どこにどう介入するかはケースバイケースです。


不登校の裏に「考え方のくせ」がある場合、

単純に登校刺激を与えたり、心の回復を待つだけでは変化は起こりづらいものです。

なぜなら、この「考え方のくせ」は知らない間に本人に身に着いたものであり、自分でそれを自覚すること自体が難しく、心のどこかで「極端かもしれない」と思っていても、本人にとってはまぎれもない”事実”だからです。

不登校の理由は決して「考え方のくせ」だけではありませんが

気になる方は是非一度お問い合わせください。

一緒にお子様の「考え方のくせ」を探り、解決に向けた糸口をつかみましょう。

気が付けば早いもので、発達相談室つばさを開設してから1年の歳月が流れていました。


医療機関が少なく、発達や子どもの育ちについて継続的に相談できる場所が少ないこの北摂の地にあって、当室の存在も徐々に地域の皆様に知って頂いており、有難く思います。

地域の皆様のお役たてるように、一層努力してまいります。


最近の傾向としては、発達面のトレーニングのご依頼もあることながら、家庭でのお子様への対応方法、接し方に関するご相談が増えている印象です。

こだわりが強く、親が言った方法ではかんしゃくを起こして支度や登校が出来ず、ご飯が食べられない、といった内容や、

家での問題行動、例えば食卓に立ち上がる、モノを投げる、などへの対応方法のご相談です。


これらの問題はより早期に、お子様が小さいうちに対応される方が解決が簡単で、短い期間で解決できます。

当室ではABAに基づいた考え方で状況を客観的に分析し、解決方法を提案しています。


開設当初想定したいたように、医療機関にはかかっているものの、そういった家庭での具体的な困りごとへの対応方法を相談できている家庭は少なく、当室の存在意義を感じています。

家庭へ直接出向き、「この場所でこうする、ここをこうして…」と具体的に作戦を練れるところも、当室ならではです。


もしお困りの事、解決したいことがございましたら、是非お気軽にお問い合わせください。

今後とも、よろしくお願い致します。

今年度も、キンダーカウンセラーとして勤務している幼稚園で、研修を行いました。

今回は特別なテーマを決めず、先生たちから出てきた疑問や悩みをシェアし、その中から2,3個トピックスを選び、答えていくというものでした。

先生たちから出たテーマをまとめると、大きく3つでした。

・話が理解できない/伝わらない

・注意がすぐ逸れる

・自信がなく、集団の中で自分を出せない

どれも保育をしていく上ではとても気になるテーマですね。

その中から、基本的でとても重要なテーマを一つ取り上げてご紹介します。


・『話が理解できない/伝わらない』

「話をしても伝わっている感じがせず、返事はするけどまた繰り返すので、理解しているのかどうかわからない」これはよくある質問や悩みなのですが、子どもの事を理解する際に、この問いには一つ、大きな落とし穴・思い込みが隠されています。

それは、

『話が分かれば、やる/やらない、だろう』という思い込みです。

大人はこちらの言っていることが分かれば、それに従って子どもが好ましいことをやるだろう、好ましくないことはやらないだろう、と考えがちです。

事実、多くの子は大部分において大人が真剣に伝えたことを理解すれば、大人の期待に応えて行動を修正してきます。

しかし、そうばかりとは限りません。話を理解できることと、理解した内容に従うことは、本来別の次元の事として理解すべきことなのです。

ですから、先の質問は、実は2つの事を同時に聞いているのだということに気づくべきなのです。

「話をしても、理解できているかどうかわからない」

「指示に従わない」

こう考えれば、まずその子の知的な能力、会話の能力から、こちらの言っていることを理解できているのかどうか、そういう目線で事態を理解できるようになります。

もし理解できていないのであれば、従えるわけはありません。どうすれば理解しやすいのかを考えるのが先決でしょう。

理解した上で、従わないのだとしたら、

モチベーションの部分に問題があるのか、先生と子どもとの関係性に問題があるのか、子ども同士の関係性に問題があるのか、はたまた家庭環境の要因なのか、子どもの行動をつぶさに観察し、原因を探っていきます。


こういった疑問を持つのはは、なにも幼稚園や保育園だけではありません。

学校や児童デイサービス・放課後デイサービスなどでもよくある光景です。

子どもの発達(知的)水準の理解と、子どもの行動の問題を、ごっちゃにして考えてしまうと、事態が見えづらくなるのです。

子どもを支援する者としては、子どもの知的水準や発達特性、そしてそれらと環境との相互作用が、”行動”として表れているのだということをしっかりと理解し、関わりたいものですね。



発達相談室つばさでは、幼稚園・保育所・児童デイサービス・放課後等デイサービスへのコンサルテーション、事例検討、勉強会のご相談も承っています。

問い合わせよりご相談下さい。

まだ梅雨も来ていないのに夏のような日々がやってきましたね。

本格的な夏が恐ろしいです…


さて、来年度に幼稚園を考えられる保護者様は、この夏ごろまでに幼稚園の情報を集め、秋ごろに願書をだす、

保育所を考えられる方は12月までに就園先を考えることと思われます。

そこで、当方の経験から、幼稚園や保育園を選ぶ際の基準をお伝えしようと思います。

発達障害がある、あるいは発達に気になるところがあるお子さんの場合、就園先は慎重に選ばれた方がよいかと思います。

定型の発達をされているお子さんであれば、ある程度どんな環境でも適応していくと思いますが、発達に特性がある場合、ある種の環境では本人なりに、いきいきと過ごせない場合があります。


ポイント1

『発達の遅れや偏りに理解があり、対応の実績のある園か』

特に私立幼稚園の場合に多いですが、園によって”どの程度の子までなら受け入れるか”という一定の基準がある園があります。

発達に遅れのある子の入園に抵抗感を示される園、こだわりや多動など、発達上の特性が集団生活に大きな影響を及ぼすと判断される子の受け入れに渋りを見せる園…

そういった園が悪いというわけではなく、目指す保育をする上である程度一定の水準の子どもたちを集め、保育の質を担保する、職員を守る、という意味合いがあると思われます。


では、そういった園をどうやって見極めればよいのか…

1.保健センターで、地域の事情に詳しい保健師さんに情報を聞く

地域の園事情をよく知る保健師さんであれば、園ごとの特徴を知っている場合があります。立場上どこを勧めるとは言えないと思いますが、お子さんの発達の状況を相談したうえで、評判を聞いてみることは参考になるでしょう。


2.園庭開放などに遊びに行き、様子を見る

園のHPを見れば、園庭開放の日時を掲載している園が多いでしょう。

園庭開放に子どもを連れて遊びに行き、園児の様子や保育士の様子などを見ましょう。

それだけで園の様子が分かるわけではありませんが、保育士の挨拶の仕方や園児との関わり方など、間接的な情報ではあるものの、園の雰囲気が感じられると思います。

また、思い切ってその時に園長や管理職に就園について、子どもの発達について考えていることを相談するのも手です。

「過去に似たような子が就園したことがあるか?」「その時どのように対応していたか?」「親が気を付けるべき点はあるのか?」などを聞いていくと、その園の考え方や方針が見えてくるでしょう。

多忙な職場なので、事前に連絡を取った方が無難ですが、もしその第一手で対応が冷たい、親身に相談に乗ってくれない、となれば、就園後も子どもの発達や個別的な相談に親身になってくれる可能性は低いとみていいでしょう。

勇気がいることだとは思いますが、園の対応の仕方を見極める上では大切な一歩です。

夏前から夏ごろの入園説明会に出向いて同じことをすることも可能ですが、多数の保護者が詰めかけており、ゆっくり相談する余裕はないと思うので、もう少し事前の園庭開放の時に相談することをお勧めします。


ポイント2

『自由重視か、設定重視か』

すごく乱暴な分類ですが、園の巡回相談の経験上、保育の方針は2通りです。

「自由重視」と書いたのは、あまり多くの設定活動を詰め込まず、子どもが主体的に遊びを選び、展開することを見守るタイプの園の事です。

例えば登園し、朝の会を終えたら園庭や室内を自由に選び、1時間くらいは好きに過ごす、そして昼食を食べ、再び自由に遊んだ後降園する、こんなイメージでしょうか。

もちろんその中に季節ごとの活動や行事ごとの練習は含まれますが、比較的ゆったりのびのびと過ごせるタイプの園です。


「設定重視」と書いたのは、保育時間の中に設定活動、つまり造形遊び、リトミック、音楽、かずやひらがなの学習、園ごとの目玉?の活動(例えば鼓笛とか)を多めに設定する園の事です。

イメージとしては、椅子と机があり、そこでワークブックをしたり、ピアニカを吹いたり、幼児的な活動の中にもどこか学校っぽい雰囲気のある園です。

私立の幼稚園、保育園に多く見られます。

中には極端に「右脳教育」と謳う園もあるほどです。



さて、発達に気になるところのある子が向いている園はどちらなのか…

一概には言えませせんが…それぞれの長所と短所はあります。


自由型のメリット:

 あれ、これ、と活動を強要されることが少なく、その子なりの過ごし方が出来る。好きな活動を自ら選び取っていく楽しみがある。

自由型のデメリット:

 自ら遊びを広げることが難しいタイプの場合、”自由”が逆に”不自由”に変わりやすい。枠組みがゆるやかなため、先の見通しが持ちづらく、何をしていいのか分かりづらい。


設定型のメリット:

 やるべきことが明確に設定されており、先の見通しが持ちやすい。用意されている活動に興味を示せる場合、自分だけでは手に入らない体験を多く持つことが出来る。

設定型のデメリット:

 自由時間が少ないので、存分に体を動かし、自由な着想を広げて遊びを創造する体験が乏しくなる。活動の水準が発達の水準に見合っていない場合(全般的に発達が遅れている子の場合)、楽しめることが少なくなり、適応も難しくなりやすい。



よく聞く話で、「うちの子はこだわりとか、興味の偏りがあるから、自由な園の方が向いていると思う」というお母さまの声です。

実は、これはケースバイケースです。


自閉症の傾向や要素があり、「自由にしていいよ」と言われると逆に何をしてよいか分からず困ってしまうタイプ。ルールや基準があいまいだと判断や行動の基準がよくわからず、自分なりに行動して結果、「こだわりが強い」「がんこ」などと言われてしまうタイプ。

こういう子にとって、自由型の園での適応が難しくなる場合があるのです。

具体的には、「自由遊びの時に遊びを上手く見つけられず遊びこめない」、「友達を作りづらい」、「行事ごとの練習・本番に参加しづらい」などです。


逆に、設定型の園に入った場合、やるべきことは時間ごとに決まっており、何をしてよいかと不安になったり、やるべきことが分からないということが起こりづらくなります。

小学校の授業をイメージしてみてください。時間割があり、その時間何をするあらかじめ分かっていますよね?先の見通しを持つことが難しいタイプのお子さんの場合、自由な園での生活では色々苦労があったものの、規則や見通しのはっきりしている小学校でのほうが適応がよくなったというケースは珍しくありません。


では、自由が苦手なタイプや見通しの持ちづらいタイプは設定型の方がよいかと言うと、そう単純でもありません。

一匹狼タイプで、好きなことが明確にあるお子さん、興味の有ることはいくらでも出来るけれど、興味がないと一切取り組もうとしないお子さん、こういったタイプの場合、設定されている活動が興味に合えば全く問題はありませんが、合わない場合、園生活はだいぶん苦痛になり、適応も難しいでしょう。

友達と活動する、皆で同じことをする、ということは難しいものの、自由型の園でその子なりにのびのび過ごす、最低限のルールだけを守る、という過ごし方もありです。


また、全般的な発達に遅れのあるお子さんの場合、設定型の園での活動そのものが、お子さんの発達水準に見合っておらず、理解できない、うまく取り組めない、ということが起こり得ます。

もちろん自由型の園でも同様の事が起こりますが、設定型の園の場合かなり高度な活動を取り入れている園もあるので、注意が必要でしょう。

設定型の園の場合でも、個別の配慮や工夫が行き届く環境であれば問題ありませんが、経験上多くの場合保育士の先生方は”するべきこと”に追われており、個別配慮をしたくても全体とのバランスを考えて出来ない、というジレンマを抱えている場合が多いです。



我が子の発達の状況、性格、園の気風、難しい判断ですが、総合的に考えていく必要があります。


ポイント3
『近さ、にこだわらない』

「何かあった時のために近い園の方がいい…」というのもよく聞く話ですが…

最短2年、最長で6年弱の園生活を考えた場合、寝ている時間を除けば生活のほぼ半分以上を園で過ごすことになります。その園での生活の質は、お子さんの成長に大きく影響します。

園バスを遠くまで出している園が多いです。

選択肢の段階から近い距離の園だけを選ぶことはやめましょう。少し遠くても、とても良い保育をしていて、フィーリングの合う園があれば、十分通う価値があります。

「何かあった時」というものは年にそう何回もありません。年1回か数回の可能性のために、他の良さを切り捨てるのはもったいないです。


とは言いつつ、例えば保育園への送迎の場合、自宅と逆方向に送迎しなくてはならないなど、現実的に厳しい条件の事もあるでしょう。

地域の小学校へ進む際、地元の園から進学させて友達や顔見知りの多い環境にしてあげたいという親心もあるでしょう。

自分の卒園した園なら雰囲気も分かるし、同じ園にしたいと思うこともあるでしょう。

僕も2児の父親としてその気持ちはよーく分かります。


子どもの発達や成長の事を考え、その時出来るベストの選択をして頂ければと思います。



ポイント4?
「親がどれだけ行事ごとに参加するか」

親御さんの中には、人づきあいが得意でない、ママ友同士の交流や、やり取りが非常にストレスになる、という方もいらっしゃると思います。

多少は経験としてやってみたい、ママ友も作りたい、という方は別ですが、どうしても人づきあいが苦手でストレスになりすぎてしまう方の場合、園の行事に保護者がどの程度参加するか、事前に調べておきましょう。

保育園は特性上、保護者がすることは少ないです。が、中には保護者も積極的に作り物をしなければならない園もあるようです。

幼稚園だとしても、保護者の園行事への参加度合いは千差万別です。

登園方法にしても、集団の徒歩通園になり、保護者の送迎が当番制で回ってくる園もあれば、自己送迎が園バスかを選べる園もあるでしょう。自己送迎を選べば、園ですれ違い挨拶を交わすくらいで、ほぼ他の保護者との交流を減らすことも出来ます。



以上、発達障害のある子、発達に気になるところのある子の園選びのポイントについて書きました。

参考になったでしょうか。



最後に個人的な感想ですが、

やはり、保育士の先生方が生き生きと笑顔で働いている園、

子どもたちが生き生きと自然な感じで過ごしている園、こういった園が、良い園だなと思います。

医師から「自閉症」の診断がなされたものの、具体的なアドバイスはなく、「今できることがあるならば早くしてあげたい!」とのお母さまの強い希望から、当方に相談と訓練を申し込まれたケースをご紹介します。

※事例は個人が特定されないよう、改変を加えてあります。


〔ケース概要〕

 2歳で「自閉スペクトラム症」と診断され、「なんとかことばを育てたい」「出来ることがあれば早くやってあげたい!」との主訴で、無発語の状態からトレーニングを開始し、”ちょうだい”、”どうぞ”の基本的なやり取りの練習から初めて、動作模倣、音声模倣を通じて有意味語が話せるようになった2歳の男の子のケースです。


〔R君の紹介〕

 2歳の男の子。坊主頭が可愛い目のクリっとしたお子さんでした。「おはよう」と挨拶をすると目を合わせることなくセラピストの持っていたカバンのキーホルダーに突進し、興味深げに見ていました。セラピストと遊ぶ間やそのほかの時間も、座ったかと思えばまたどこかに行き、遊びを転々とするお子さんでしたが、トミカを並べて遊ぶ間だけは静かに集中をしていました。

 保健センターで取った新版K式発達検査の結果は、運動面は問題なし、その他は見てわかる力が6か月~1年の遅れ、言葉や社会性の力が1年程度の遅れ、ということでした。



〔初回相談の様子〕

 R君は胎生期や新生児期など、特に大きな問題もなく、あまり泣かず、育てやすい子だったそうです。ただし1歳を過ぎる頃から夜泣きがひどくなり、遊びかけてもあまり目が合わず、大好きな車のおもちゃで一人で遊ぶことが多く、”なんか変わっているな”と思いながらも、その時は”手がかからなくて楽だ”くらいに思っていとのことでした。しかし、1歳半健診で言葉の遅れを指摘され、心配になったお母さまが医療機関を受診したところ、2歳で「自閉スペクトラム症」の診断が降りました。お母さまはショックだったものの、「出来ることは早くやってあげたい、特に言葉を伸ばしたい」との希望で、相談とトレーニングが始まりました。

 R君の遊びの様子を見るために、セラピストが机に座り、向かいにR君に座ってもらいました。しかし、R君はセラピストが持ってきたおもちゃや訓練道具が気になって仕方がなく、机の下を潜りながらおもちゃに突進してきました。止めても止まらないその様子は、まさに突進、と呼ぶにふさわしかったと思います。

 ビー玉を取り出して見せると、R君が興味を示してくれました。そこで、ビー玉を見せつつ、椅子を指さして「座る」と言うと、何度目かでその意味を理解し、R君は自分の椅子に座りました。

 ビー玉を1個渡し、缶の中に落とすように指示すると、R君は手のひら全体でギュっギュと押し込み、すぐに次のビー玉を貰うためにセラピストの手元に手を伸ばしてきました。それは、”ちょうだい”というよりは”奪う”というニュアンスがぴったりくる手の伸ばし方だったので、セラピストがその手を制し、R君の手のひらを上向きにさせて(ちょうだいのポーズ)、ビー玉を一つ置き、また缶に入れてもらいました。そしてまたすぐさま手を伸ばしてくるので、それを制して手のひらを上に向け…そういうことを何度か繰り返しました。

 そうすると、やがてR君は手のひらを上に向けるとビー玉がもらえるということをなんとなく理解していき、自分から手のひらを上に向けることも出てきました。セラピストが「偉い!」と褒めますが、この時点では笑顔や褒めに対する反応はありません。ひたすらに”次のビー玉ちょうだい!”という感じで、おしりが半分浮いていました。

 これは何をしているのかと言うと、R君の人との関わり方や、要求の仕方、他者からの働きかけに対する反応の仕方を見ているのです。ある程度着席して居られるのかどうか、対面する相手にどのくらいの注目が出来るのか、相手から働きかけられた時にその意味をくみ取り、相手に応じることがどのくらい、どんな方法で出来るのか、そういったことをアセスメントする(調べる)のは、トレーニングの開始にあたってとても重要なことです。R君の場合、セラピストへの注目はほぼ皆無で、人よりモノへの注目が高く、気になるものがあると飛びつかずにはいられない様子が見られました。しかし、簡単な言葉の指示+ジェスチャー(椅子を指さす)があれば、それに応じられる時もあり、パターン化したやり取りであれば、短時間の内にそれを学習できる可能性があることも分かりました(例:手のひらを上に向ければ、ビー玉がもらえることが分かる)。

 他にも簡単な型はめパズルや、マッチング課題などを行い、R君の様子を一通り観察した後、改めてお母さまにお話を伺いました。

 現在(2歳を過ぎたころ)で、有意味語と呼ばれる、意味のある言葉は出ていないこと、親が言ったことは、簡単なことなら分かっていそうなこと(「座って」「お風呂だよ」など)、偏食が強いこと、動きが多くて外出時は危険が多いこと、怒るとかんしゃくがひどいこと、歯磨きを嫌がること、道を覚えることがとても得意で、病院に行くための道を通るとすごい勢いで泣き出すこと(注射の嫌な体験と結びついているようでした)、などが聞かれました。

 お母さまの希望としては、

  1. 言葉を話せるようになってほしい
  2. 落ち着いて、言うことを聞けるようになってほしい

というものだったので、セラピストからは

  • 言葉の発達を促すためのトレーニング
  • お母さまからの日常生活での困りごと、接し方についての相談と助言

この2つを中心に相談を勧めていくことを提案し、次回から月2回のペースでご自宅に訪問し、実践していくこととなりました。


〔2回目以降のトレーニング・カウンセリング〕

セラピストが用意したプログラムは以下のようなものでした。

・ビー玉落とし

 ”ちょうだい”+”どうぞ”でモノを貰うこと、短時間待つことなどを目的としました。

・マッチング

 ことばの基礎となる、同じもの同士を結びつける練習、課題でのやり取りを通して身近な物の名前に触れる経験、を目的としました。

・パズル

 基本的な認知の力である、形を見分ける力を養う練習。ビー玉落としと同様、パーツを渡す際に”ちょうだい、どうぞ”のやりとりを行い、言葉の基礎である双方向のコミュニケーションにも重点を置いていました。

・絵カード

 身近な絵が描かれたカードを目の前に2,3枚並べ、「りんごちょうだい」の言葉がけ+指差しでリンゴのカードをパペットや手作りのポストに入れてもらう課題。「りんご」という音とリンゴのカードと言う視覚情報を結びつける目的があります。

 また、全体を通して着席の練習(次年度の就園を見越して)、セラピスト(他者)の指示に注目する、という練習も行っています。他者に注目するということは言葉の発達だけでなく、集団生活での適応面を考えても、重要なスキルです。

 トレーニングの様子ですが、当初R君は着席し続けることが難しく、課題の途中でも課題の合間でも席を離れ、セラピストの道具を触りに来たり、違うオモチャで遊びだそうとしましたが、お母さまにも協力してもらい、席を離れる前に体を止めてもらったり、セラピストがR君の集中力を見極めながら次々と魅力的に課題を提示していくことで、徐々に座れる時間が伸びてきました。

 ビー玉落としは初回に実施したこともあり、数回の復讐で手のひらを上にして”ちょうだい”のポーズをとることが出来ました。”ちょうだい、どうぞ”のやりとりは親子間だけでなく、今後他者とかかわる際の重要なコミュニケーションスキルなので、家庭でのやり取りの際にも取り入れて頂くようにお願いしました。

 マッチングの課題では最初は全く同じ絵カード、例えば”リンゴの果物模型”と”リンゴの果物模型”を組み合わせることから始め、徐々に”リンゴの果物模型”と”リンゴのイラスト”や、”リンゴの写真”と”リンゴのイラスト”などをマッチングできるように難易度を上げていきました。「リンゴ」という言葉を発する前に、”リンゴの実物”と”リンゴの写真(イラスト)”、そして”「りんご」という音”の3つが同じである、という理解を養うことが大切なのです。この理解をベースにして、やがて口の周りの筋肉の発達が進み、「リンゴ」という音を発する、つまり、「リンゴ」と喋れるようになるのです。

 パズルは直接言葉に結びついているわけではありませんが、基本的な認知の力を向上させるのには重要なことと、R君が好きな課題だったので、中休みや気分転換的に意味合いも込めて実施しています。トレーニングでは苦手なことだけではなく、得意なことを伸ばすことも重要です。型はめ、2ピース、4ピースとどんどん上手になっていきました。

 絵カードの課題では、最初はセラピストの指示など聞かず、自分が入れたいカードを選んで強引に渡してきたR君でしたが、何度か練習し、徐々に指さされたカードを渡してくれることが増えてきました。言われた音と、目の前のカードが同じであるということの練習でもありますが、このように”指示される→応じる”というコミュニケーションの基本的な練習でもあります。最初は褒めても全く笑わないR君でしたが、セラピストが一人キャッキャと喜び、褒めていると、次第ににやりと笑うようになってきました。とても可愛かったです。


 さて、数回のこういったトレーニングを経て、R君がだいぶん着席していること、セラピストに注目を向け、セラピストの指示を聞く事に慣れてきたころ、別の課題も開始しました。

・動作模倣

 セラピストが万歳をしたり、手を叩くといった単純な動作をし、それを真似てもらうというもの。真似が出来るとご褒美がもらえる仕組みです。この、”真似る”という行動は学習を成立させるとても重要な要素です。人は皆子どもの頃、大人を真似ることで様々なことを学び、吸収していきます。言葉の発達も同じです。まずは動きから、大人を真似るという経験をしてもらいました。

 最初はお母さまに手伝っていただき、セラピストが万歳をしたら、R君にも万歳をしてもらいました。同じ動作が出来たらすぐさま褒めてご褒美を渡し、また繰り返します。R君はこの課題の意味を理解し、すぐに動作を真似することが出来ました。そして、次の段階です。

・音声模倣

 動作模倣をしながら、例えばセラピストが両手を頬の横で広げて「あ!」と音を出します(驚いた時のような)。それをR君にも真似てもらう、というものです。言葉の理解が進んでくる頃に、意識的に音を真似て出す、するといい経験(褒められる)が出来、また音を出したい(ことばを話したい)、という気持ちを高めることが目的です。有意味語を話す前の段階と言っても良いでしょう。

 この課題も、R君は「あ」や「お」「ぱ」や「ば」などいくつかの音を真似することが出来ました。こうなってくると、あとは出せる音の中から2音程度の組み合わせを選び、言葉に繋げていけます。「ぱぱ」「ぱん」などなど。言えた言葉があれば、その言葉のカードなどをとって、R君とセラピスト、お母さまと一緒に食べるふりをし、箱にしまうなどして遊びました。

 このようなトレーニングを実施する間、お母さまにも宿題をして頂きました。それは

  • 何かモノをあげる時、あるいはR君が要求してきたとき、無条件であげるのではなく、”ちょうだい”というジェスチャーをさせる、そこにお母さまが「ちょうだい」という言葉を言って、渡すときには「どうぞ」と言う
  • お母さまが積極的にR君の動作や、喃語を真似する

というものです。

 R君に真似をしてもらう前に、お母さまがR君の真似をし、”君の事を見ているよ”、”君に関心があるよ”と伝えてもらい、R君にお母さまとのやり取りや、お母さまの反応に興味を持ってもらうためです。”人と関わることが楽しい”、”お母さんといると面白いことが起きる”こういう気持ちを持つことが、言葉の発達や対人関係の発達においてとても重要なことなのです。一方的にR君に発語を促すわけではなく、お母さまから積極的にR君に関わり、やりとり、コミュニケーションの楽しさを伝えることが重要だと、繰り返しトレーニングの中で伝えさせて頂きました。お母さまも積極的に宿題に取り組んで下さり、おどけた調子で「ぱ!」とポーズをとってみたりして、割と楽しく家庭でのトレーニングに取り組まれたそうです。ただしお母さまだけがおどけているだけで、R君に見向きもされないことも多々あり、寂しい気持ちにもなったそうですが、よくあることです。励ましながら、くじけず頑張って頂きました。

 そういった取り組みもあり、10数回程度、初回の相談から4,5か月経つ頃、無発語だったR君は「パパ」や「ママ」などの言葉や、上手く発音できない言葉でも「うーま!(くるま)」などの言葉を話せるようになっていました。お母さまやお父様も言葉が出てきたことに非常に喜ばれ、もっと言葉を引き出して、いろいろなやり取りをR君としたいと話されました。喜ばしい限りです。


 さて、このようなトレーニングと並行して、お母さまからの相談も受けていました。

 主なモノはトイレトレーニングに関すること、食事に関することなどです。また、次年度の就園も控えていたため、園選びの件に関しても相談を受けました(詳細については長くなるので、また別の記事でまとめたいと思います)。R君は結局、お父様の出身園である、私立の幼稚園に入ることになりました。R君の様子を見ていたお母さまは入園させてもらえるかどうか非常に不安だったそうですが、入園前の面接で「R君のペースに合わせてやっていくから大丈夫!最初は教室にはいれなくても、だんだん入れるようになっていくから」と言われ、ホッとしたそうです。


 今後は、発語に関しては一定のめどがたち、あとは日々の生活の中で経験を豊かに積み、様々なことへの興味を育てること、周囲の大人が二語文程度の優しい言葉がけで接すること、R君のペースで言葉が伸びていくことを伝え、トレーニングは一度終了してもいい旨を伝えましたが、お母さまが就園後の適応面に不安があるとおっしゃられたこともあり、とりあえず月に1回のペースでフォローアップの相談を続けさせて頂くこととなりました。必要があり、園の方も許可してくださるようなら、セラピストが園訪問をし、R君の指導方法や教育方法について情報共有が出来ることも伝えてあります。