発達相談室つばさでは、お子様のアセスメント(評価)の一つとして、Vineland-Ⅱをお勧めしています。
発達検査である「新版K式発達検査」や、知能検査である「WISC」と違い、耳慣れないものだと思いますが、お子さんの現状を改めて知る事、そしてこれから何を支援し、何を伸ばしていってあげたらいいのかを、包括的に知ることのできる、とても役立つ検査です。
〇どんなことが分かるの?
Vineland-Ⅱ適応行動尺度では
・コミュニケーション(分かる言葉、話せる言葉、読み書き)
・日常生活スキル(身辺自立、家事、地域生活)
・社会性(対人関係、遊びと余暇、コーピングスキル)
・運動スキル(粗大運動、微細運動 ※~6歳、50歳~に限定)
の4つの領域において、お子様がどの程度「適応的な」行動をとれているのかが分かります。
ここでいう「適応的な行動」とは、
・日常生活を安全かつ自立的に送るために必要となる年齢相応のスキル
・食事、身だしなみ、掃除、お金の管理、仕事、友人関係、社会的スキルなど
です。
つまり、お子様がどのくらい
「コミュニケーションを周囲ととれるのか」
「日常生活のスキルを身に着けているのか」
「友達や社会とかかわるスキルを身に着けているのか」
「運動の能力があるのか」
ということが分かります。
〇発達検査や知能検査とどう違うの?
発達検査や知能検査は、お子さんの発達の状況や、知能、および知能のバランスについて教えてくれるものになります。
例えば知能検査を例に出すと、
「総合のIQは100なので平均的な範囲、言葉で理解し、考えることよりも、見て判断し、視覚的に考えることが得意」
といったことが分かります。
これは個人の知能を主に認知的な側面から捉え、評価したもので、お子様のもともと持っているポテンシャル、ということが出来ると思います。
それに対して、Vineland-Ⅱで出される結果は、「現在お子さんが日常生活(社会生活)で実際に発揮しているパフォーマンス(行動)がどの程度なのか」というものになります。
少しわかりやすくするために例えを出すと、10歳でIQ100のASD(自閉スペクトラム症)のお子さんがいたとします。IQは100なので年齢相応の理解が出来、行動が出来ると”期待”されます。
しかし、そのお子さんは学習につまづくことはなく、会話も問題なく出来ますが、こだわりが強く、日常生活の一つ一つに渋滞したり、お友達と意見を交換し、譲ったり譲られたりすることが苦手です。また、不器用なところがあり、お風呂ではお母さんに洗髪の仕上げをしてもらう必要があります。
さて、このケースでは、IQは100なので、IQの数値だけ見れば特に”問題はない”のですが、実際の行動としては、
・コミュニケーション(言語的な会話の能力)は、ほぼ問題なし
・日常生活スキルでは、支援が必要
・社会性では、他者とのやりとりに支援が必要
という状況が見えてきます。
「知能」や「発達指数」はお子さんの特徴を捉え、私たちに支援に関する大切な情報を教えてくれますが、”実際の困り感”を反映しているとは限りません。
例えIQが60であっても、社会性が高く、お手伝いも進んでやり、日常生活スキルには問題がないお子さんもいます。
「IQ」と「適応行動」とは別の次元のものの見方であり、両者を一緒に見ることで、その子にとってどんな支援が必要なのか、親や支援者はどのように関わっていくべきなのかがより鮮明に見えてくるのです。
「知能(発達指数)」が「何を分かっているか」を見るのに対し、「適応行動」とは「何を”実際に”しているか」を見るものだと言えます。
〇どんな風に役立つの?
発達障害の支援や育児において、今幼少期や学童期に大切だと言われていることの一つに
「ライフスキル」のトレーニングがあります。それは代表的な物を挙げると
・身だしなみを整えること
・施錠やごみ捨て等の生活スキル
・規則的な生活や食事
・お金を管理すること
・進路を選ぶこと
などです。(他にも外出、余暇、対人関係、地域参加、法的な問題、などがあります)
これらのことは学校では教えてもらえず、親もなんとなくこれまでの習慣上自然に手伝ったり支援していることで、普段の生活で意識することが難しい領域です。
しかし、昨今大人の発達障害に関する情報が集まり、発達障害の就労支援や、就労してからの精神的なケアの現場から、実は仕事上必要になるスキルよりも、こういった一人で生活するための「ライフスキル」が不足しているがために、社会人生活が破綻しているケースが多数報告されているのです。
Vineland-Ⅱを使うと、
・社会生活(学校など)に必要なスキルだけではなく、日常生活全般において何を支援し、何を伸ばしていったらいいのか、具体的な目標が立てられます
・将来に向けて、一歩引いた広い視点でお子さんの成長を考え、成長を促すことが出来ます
・”主観”ではなく、科学的に証明された検査結果で、”客観的”にお子さんの状態を捉えられます
・学校や放課後等デイサービスの人と、お子さんの得手不得手や課題、得意な点について共有し、目標を共有しやすくなります
〇どんな人にお勧め?
・お子さんの対人関係におけるスキルを知りたい方
・お子さんが実際にどの程度の会話や読み書きが出来るのかを知りたい方
・お子さんがどの程度身の回りの事を出来るのか知りたい方
・お子さんの運動スキルがどの程度あるのか知りたい方(6歳まで限定)
・お子さんの現状を発達や知能だけでなく、日常生活や社会生活までを含めた包括的な視点で振り返りたい、知りたい方
・お子さんの支援に関して、何をどうしていいか分からなくなっている、行き詰っている方
・小学校以上に進学し、日常的な対応の仕方を相談する先がなくなっている方
・進学や就労に向けて、今できることが何なのか知りたい方
・検査結果をもとに学校や所属している地域サービスの人とお子さんの情報を共有し、支援目標の参考にしたい方
、などなど
※保護者様はもちろん、教育関係や支援者の方、また、成人しているご本人様が自分自身を知るためにもお使いいただけます。
〇対象は何歳までですか?どんな人でも受けられますか?
・対象年齢は0歳から92歳まで
・障害の有無は問いません(知的障害でも、発達障害でも、精神障害でも、特に障害がなくても大丈夫です)
〇どのような検査をするのですか?
・お子様の事をよく知る保護者様に検査者が質問をし、答えて頂く形で検査を進めます
・ご自宅でも、外でもプライバシーが守られる環境であれば実施可能です
・お子様の同席は必要ありません(ただし、検査者とお子様が一度も会ったことがない場合、事前に一度どこかでお会いしておく方が無難です)
・時間は90分~120分を見て頂きます
・ご用意いただくものは特にはありません
〇料金はいくらですか?
検査代金として10,000円を頂きます。
事前に検査を希望される理由、これまでの発達歴、お子さんの実際の様子などを確認させて頂くため、相談料(当室規定料金の50分6000円)が必要です。(既にカウンセリングを実施し、初回の相談を終えられている方は不要です)
また、結果をご報告するため、検査後にも一度相談の予約を取って頂きます
まとめると、
(初回相談料+検査料+検査結果報告のための相談料)=(6,000円+10,000円+6,000円)
の計22,000円が必要です。
〇どうしたら検査を受けられますか?
HPの予約フォームからお申込み頂き、自由記述欄に「Vineland-Ⅱを希望します」とお書きください
既にご相談中の方は、直接セラピストに伝えるか、メールでおっしゃって頂ければ結構です
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